エネルギー事業

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第3弾 環境省委託事業「平成26年度 大規模CO2削減ポテンシャル調査」

「温泉」は日本が誇る 天然エネルギー資源

日本には全国各地に温泉地があり、その源泉の数は2万8000箇所を超えるほど。まさに温泉大国といえます。さまざまな効能を持つ泉質や自然一体となった風情で私たちを癒し楽しませてくれる温泉ですが、一方でその膨大な湯量が持っている熱量は貴重な天然のエネルギー資源であるともいえます。

“源泉かけ流し”という言葉をご存じでしょうか。これは源泉から湧き出たお湯を温度調整のうえ、そのまま浴槽に流していることを意味します。では、かけ流したまま浴槽から溢れたお湯はどうなっているのかというと、日本の多くの温泉施設ではほとんどが利用されないまま排湯として処理されているのが実情です。つまり、温泉熱は入浴適温(約40度)でのみ利用され、残りの熱は利用されないまま捨てられてしまっていることに。これは実にもったいないことです。

こうした利用されていない熱エネルギーをもっと効率的に活用することができれば、大きな省エネ(CO2削減)につながるのではないか? そこで実際に温泉にどれほどのポテンシャルが秘められているか、調査・検証しようというプロジェクトが政府(環境省)委託事業として採択されました。それを請け負ったのが東テクです。

約4割ものCO2削減 ポテンシャルを算出

調査地となったのは岡山県真庭市の「湯原温泉」。県北部に位置する美作三湯のひとつで全国露天風呂番付において「西の横綱」に位置する名湯として知られ、年間来客22万人を誇ります。

温泉の源泉温度48℃、湯量は毎分約5,800リットル、年間305万トン。一旦、同地山腹の貯湯槽に貯められた源泉が自然落差により域内16の旅館・ホテルに配湯される仕組みです。
これに対し、東テクが源泉~配湯~排湯におけるエネルギー使用状況、設備の運用状況などについて詳細な調査を実施。約半月をかけ、施設ひとつひとつの浴槽から加温ボイラー、配管システム、さらには照明や冷暖房設備に至るまで、施設管理者へのヒアリングなども含めて実態を精査しました。

その結果、源泉の使用量は施設全体で約60%程度と推定、すなわち約40%が未利用のまま。その他、全体の消費電力の約28%を占める照明のLED化や空調負荷低減のための断熱・遮熱対策などを行った場合の省エネの余地が判明したのです。こうした未利用エネルギーをベースとした、水熱源ヒートポンプによる温泉熱の再利用や照明・空調設備の更新などを行うことで、現状のCO2発生量5,100トンのうち、実に約1,990トン(約39%)もの削減効果が見込めるという数値がはじき出されました。

東テクではこの結果を踏まえ、温泉施設のアクセス道路消雪設備の変更、フグの養殖、農産物のハウス栽培といった温泉熱を利用した具体的な施策なども提案。省エネ対策にとどまらず、地域活性化にもつながるアイデアとして好意的な評価をいただきました。

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